後日届いた完踏証です。これを手に入れるのに3年かかりました。感激、家宝にします。
後日あった打ち上げです。とても楽しいひとときでした。
コースの概要です。山口市の瑠璃光寺をスタートして西へ50km、豊田湖から北上して中国山地を北上。
日本海に出たら東に海岸沿いに萩まで100km。萩往還道を南下して戻る総走行距離250kmのマラソン。
関門時間は48時間。3日がかりの大マラソン大会です。
5月2日午前中に熊本を出発、1時頃に山口に着きました。瑠璃光寺内はこれからすごいことが行われるというのに閑散としてました。
しかし数時間後にはここに大勢の選手達が集まるのかと思うと、張りつめた独特の「緊張感」を感じます。
3時から近くの教育会館で説明会。10回出場の選手の表彰もありました。
仲間の田代さんも来年10回目だそうです。すごいですね。最後に小野会長の小言を聞いて解散。
2ヶ所(86km、175km)に着替えを置くことができますので2つの袋に入れて運搬車に入れます。
今回は気温が昼と夜とでは15度近く違うということでしたので、いろいろな条件を考えて服を入れました。
参加者は250km314人、140km230人、70km222人、35km238人、
60kmウォーク44人、35kmウォーク358人、総勢1406人参加です。
ほぼ全国から集まっています。250kmには熊本県からは6名参加。すべて仲間です。
我々以外こんなマニアックな大会に参加する人はいないようです。
やや肌寒い曇りの天気。まあまあのコンディション。スタートは50人づつのウェーブスタート。
今回はみなさんと一緒に5番目の6時20分スタートにしました。
小野会長の「エイエイオー」の掛け声と共に拳を挙げて、250kmのマラソンのスタートです。
ちなみに250kmは高速道路で鹿児島ー鳥栖間の距離。
それではストーリーのないドラマの始まりです・・行ってきまーす。(無事に帰って来いよー)
まず、山口駅前を通過し矢原河川の自転車道を走行。午後6時45分日没。しだいに寒くなってきました。
13km、最初のエイド、上郷駅前(午後7時40分)1時間20分経過。キロ6分の走り。全体のペースが速すぎです。最初はしょうがないですね。
途中にあったボランティアのエイド。所々に予定外のエイドがあり、とても助かります。
28km、下郷駐輪場(午後9時半)3時間10分経過。この辺では周りに畑があり、数万匹の蛙の合唱が聞けます。
ここでバックを降ろし汗を拭いてスタートしたところ、手にライトを持ってないことに気づいてあわててもどりました。
なぜかあせっている自分を感じました。まだ先は長いというのに、落ち着け落ち着け。
44km、西寺交差点エイド(午後11時40分)5時間20分経過。昨年より20分ほど遅れています。
かなりゆっくりペースです。しかし、長丁場ですから後のことを考えれば、このくらいのペースがいいのかもしれません。
とにかく周りのペースについて行き、一人にならないように注意しました。
57km、山本ボート石切亭(午前1時40分)7時間20分経過。ここで初めて自分のゼッケンと時間を記帳します。
順位を数えてみたら丁度中間くらいの順位でした(昼の写真は別の日に撮ったものです)。
ここでうどんとおにぎりをいただきました。店内はこいのぼりだらけ。
このあたりから強烈に寒くなりました。4度ぐらいではないでしょうか。手袋していても手が痛みます。
俵山温泉街にあったエイド。紅白の幕が張ってあり、まるで抽選会場風、ここにはストーブがありました。
5月にストーブ?それくらい寒いです。昨日は萩は昼30度を記録したのに。
ここで防寒着を着用。いくつかの服をバックに入れてきて正解でした。
76km、大坊ダムエイド(午前4時40分)9時間20分経過。
前回より20分ほど遅れていたので水だけ飲んで行こうかと思ったのですが、
椅子に座るとすぐにブタ汁とお茶を出されたので、断るのも悪いと思いゆっくり腰を落ち着けていただきました。
何故かまだあせっています。落ち着け!(昼の写真は別の日に撮ったものです)
午前5時、油谷(82km)で空が明るくなってきました。5時半に日の出。
やっと、中国山地を抜け日本海へ出てきました。これから、日本海沿岸を萩に向かって120km走ります。
86km、海湧(うみわき)食堂(午前6時)11時間40分経過。豆腐、卵焼き、ほうれん草、おかゆ、味付けが抜群です。
食堂の200m先に油谷中学があり、そこで着替えをもらいます。
半袖にするつもりでしたが、この時間は寒く半袖は持っていくことにしました。下着を着替えてさっぱりして再出発。
次ははるか向こうに見える俵島へ出発。島の向こう側にチェックポイントがあります。
俵島に着きました。絶景です。風は強いですが、日が照り始めとても気持ちがいいです。しばし自然を満喫。
俵島チェックポイントに到着。初めてのチェックポイントが97kmにあるとは、
さすが萩往還!はやく10個のチェックを終えたいものです。
100km地点、14時間8分経過。昨年は13時間半で通過してリタイヤしましたので、
今回は前半抑えて後半に余力を残す作戦です。
この辺で仲間の岩本さんとすれ違いました。岩本さんは66歳です。250km初挑戦年齢の大会新記録だそうです。
とにかくお元気で私よりスピードがあります。脱帽!
川尻岬・沖田食堂107km(午前9時35分)15時間15分経過。ここもチェックポイントです。
3ヶ所でカレーを食べましたが、お肉が見当たりません。ランナーのことを思ってでしょうか、経費節約のためか?
しかし、味は最高です。おかわりしたかった。
日本百選にも選ばれた棚田。その先に見える、これから行く千畳敷。絶景です。
シーブリーズ・沿岸にある喫茶店。ここでオレンジジュースを飲んで一休み。風が強く海は高波が押し寄せていました。
立石観音117km・チェックポイント。石が立っている観音様に見えるそうですが、私にはわかりません。信仰心が薄いからかな。
これからが前半のメインイベントです。目の前にそびえ立つ千畳敷に登ります。
千畳敷125km(午後12時47分)18時間27分経過。
頂上まで登るのに1時間25分かかりました。イヤというほど上り坂を歩かされました。脚はパンパンです。
ここは125kmで丁度中間地点です。18時間半かかりました。単純に計算すると37時間でゴールできます・・・そんな訳ないか。
風が強くチェックシートが飛ばされそうです。失くしたら完走を認めないということですので、慎重にバックから出し入れしてチェック。
頂上からの景色は最高。
ここで評判のソフトクリーム買って食べながら坂を下りていると、なんと・・
田代さんが車の進入禁止柵にもたれて寝ていました。フォーカスして素通り。
千畳敷を降りた民家で中学生達のエイドがありました。お昼時なのでカップラーメンなどいただきしばし休憩
私が出ようとすると学生が名前を聞くので「上野」と言うと「上野さん、がんばれ!go!go!go!」とみんなで声援。
嬉し恥ずかしでした。若いパワーをもらっていざ仙崎へ。
仙崎往路142km(午後3時40分)21時間20分経過。ここから青海島の端まで10km行って戻ってきます。
道はアップダウンが結構きつく、難所のひとつです。
暗くなるとかなり寒くなると思われますので、日が落ちる前に戻るつもりで半分走ってみました。
10kmの折り返しなので他の選手達に会うことができます。
松原さん、福岡の福地さん(ファクス申し込み組)はさすがに早い。田代さん、吉松さんも元気です。
鯨墓到着153km(午後5時15分)22時間55分経過。食事は帰りに静ヶ浦キャンプ場で5分でカレーを食べてきました。
仙崎復路163km(午後7時)25時間経過
帰りの青海大橋の上で2回目の日没を見ましたが、なんとか明るい内に仙崎に戻って来ました。
青海島往復にかかった時間は3時間15分でした。160km地点でこれだけの走りができれば上出来です。
自分の脚を褒めてあげたいです。
実は昨年、一昨年ともここで強烈なめまいが襲いリタイヤしました。仙崎は私にとっては鬼門なのです。
そこで今回はバックをここに預けず、そそくさに通り過ぎました。
結果、めまいは起こらず、無事鬼門通過!!163kmの記録更新!
宗頭文化センター175km(午後9時30分)27時間30分経過。
宗頭までの道は私にとって未知の世界です。長く感じました。そしてついに自分の脚で宗頭まできました。
感激です!(昼の写真は別の日に撮ったものです)
昨日の朝から32時間寝てません。今まで30時間以上起きたことないので、
そろそろ倒れるのではないかと思い仮眠をすることにしました。入浴して着替え30分寝ることにしました。
ところが起きたのは1時間半後でした。またまた失敗!
あわてて着替えて出発。出発は午前0時15分でした。
結局2時間45分も宗頭にいましたが、結果的にはこれが疲労回復によかったみたいです。
ちょうど出発しようとしていた選手2人がいたので一緒に行くことにしました。
こんな山中の真っ暗な中、一人で行く自信がありません。一人きりにならないことが完走の条件です。
藤井酒店でチェック。ここを左に曲がり山中にはいります。ここに6名の集団がおり、一緒に行くことにしました。
みなさんベテランの方々でいろいろお話をしました。一人で走るより気楽に走れました。写真は別の日に撮ったものです。
鎖峠付近。トラックが横をヒューと通り過ぎていきます。用心用心。
三見駅187km(午前2時20分)32時間経過。エイドがあるとのことでしたが、何もありませんでした。
駅構内に選手が一人寝ていました。起きれるのでしょうか。
これから萩市内に向かいます。市内まで踏み切りを何回も渡り、海沿いの狭い道を行きました。
深夜3時頃で真っ暗です。打ち寄せるすごい波の音が聞こえるだけです。(昼の写真は別の日に撮ったものです)
萩市内に入り玉江駅を過ぎたあたりで空が明るくなってきました。市内を北上するとやっと笠山が見えてきました。
このころから140kmの選手とすれ違うようになりました。みなさんあいさつをされます。気持ちいいですね。
午前5時40分、笠山で2回目の日の出を迎えました。笠山の頂上でチェック。ここからの眺めも最高でした。
虎ヶ崎(つばきの館)207km(午前6時24分)36時間4分経過。ここで朝食としてカレーをいただきました。
あと43kmですが、ここから普通10時間かかるそうです。
計算では4時半に着きますが、脚がいつ壊れるかわかりませんので安心はできません。
東光寺215km(午前8時)38時間経過。最後のチェックポイントです。やっとすべてクリアしました。
やったー!!シートを持って記念撮影。
残り35km、残り時間10時間。今から30kmすべて上りです。脚がもつかどうか、
往還道でリタイヤされた選手はいっぱいいます。まだ安心はできません。
萩有料道路休憩所222km(午前9時40分)39時間20分経過。ここに来るのが夢でした。
ここから強烈な上りが始まります。
このころから70km、ウォーキングの人と会うようになり、みなさんから「温かい拍手」や
「お帰りなさいの掛け声」を受けました。うれしくなります。また、返事をしないといけないので眠気も取れます。
後半の最大難所・一升谷の地獄坂。いつまで続くのかと思うぐらい急な上りの連続。
「220kmも走った後にこんな道を歩かせなくてもいいだろうに。
マラソンとピクニックを合わせてマラニック?どこがピクニックだ!登山マラソンと耐久レースじゃないか」
とブツブツ言いながら歩いていました。
だんだんふとももが動かなくなってきました。そろそろ脚の限界です。はやく峠に着きたい!
明木市。ここでは陶器市のようなものが町中をあげて行われていました。
エイドで饅頭いただき、ついでに市も鑑賞してきました。
佐々並市236km。ここのエイドの豆腐は食べなければなりません。パワーアップします。
残り14km、まだ上り坂は続きます。完踏できるかまだわかりません。
時々、舗装された平坦な道を歩くことがありますが、その時は強烈な睡魔が襲います。
下からの照り返しが余計まぶたを重くします。誤って車道に出たら大変です。
大きな声でビートルズを歌い続けました。(ヘルプ〜〜)
首切り地蔵がありましたので「ゴールできますように」「けがしませんように」
「宝くじが当たりますように」と拝んできました。
拝んで目を閉じるとそのまま寝たくなります。「この草の上で寝たら気持ちいいだろうな」睡魔が誘惑してきました。
240kmあたりにあるおばちゃんのエイド。ここのよもぎ饅頭は名物です。
最後のエネルギー補給として一個いただきました。パワーアップ!(食べてる写真は植村氏撮影。ありがとうございます))
往還道は杖をついて登りました。かなり足の負担を軽減してくれました。
最後の峠、板堂峠(244km)に着きました!登り坂すべて制覇しました。あとはゴールまで下りだけです。
しかし、その下りがまた半端ではありませんでした。
石畳やら砂利道だったり、滑って足を捻挫しそうで、一歩一歩確かめて降りました。
その一歩一歩ごとにふくらはぎにズキンと痛みが走ります。おかげで目が覚めましたが・・・。
ついにラスト200mまで来ました。最後の角を右折すると200mのヴィクトリーロードが瑠璃光寺まで続いています。
沿道には大勢の人が声援。
ここで奇跡が!走れなかったのに脚が動きます!走れます!声援がしだいに大きくなり、しだいに目がうるんできました。
門の前まで来ると「上野さんだ」「がんばって」という声が聞こえました。一斉に拍手が起こりました。もうだめです。
がまんしていた涙があふれてしまいました。涙で前が見えず、だれが言っているのかわかりません。
ただ出された手にタッチして会釈。(写真は植村氏撮影)
境内に入ると先にゴールした福地さん、松原さん、岩本さんがハイタッチしてくれました。
思わず「やったよ!やったよ!やったよ!」と何回も叫んでしまいました。
ゴール!!! ついにやりました。3度目の挑戦でやっと達成!250km完踏!
途中であきらめないでよかった!こんなすごいことが自分にもできた!マラソンしててよかった!
持っている力をすべて出し切りました。一緒に走ってくれた人ありがとう。仲間のみんなありがとう。
250kmのドラマは終わりました。今までドラマは途中で終わっていました。やっと完結することができました。
エンディングがこんなに感動的なものとは思いませんでした。
46時間5分11秒、107位。(317人エントリー・出走者296人・完踏者164人・完踏率55,4%)
ゴールの時計は時刻を表しています。16時25分です。
ゴール後、座り込んだら立てなくなりホテルまで運んでもらいました。数時間休み、夜8時からみんなで打ち上げ。
脚引きずりながらの参加(這ってでも行きます)。
去年は私だけがリタイヤしたので抑えていましたが、今日は心から喜びを表現できます。
こんなにおいしく感じたお酒は初めてです。
3年前に買って一度も着れなかった250kmのウィンドブレーカの袖にやっと腕を通すことができました。
仏の顔も3度まで、今度失敗したら止めようと思っていました。
実は宗頭のトイレで脳貧血を起こし「またか」と思い一度あきらめました。
1時間後、物音で目が覚め、めまいが起こらなかったので行ける所まで行こうと思い直して着替えました。
それが正解でした。今回のことで「簡単に弱気になってあきらめてはいけない」ということを実感しました。
最後にはこんなにすばらしい感動が待っていました。
ゴールの後振り返ると楽しいことだけが出てきます。きつかった事は忘れてしまっています。
だからまた挑戦するのでしょうね。こんなすごい体験ができるマラソンは他にありません。
大会関係の方、ボランティアの方ありがとうございました。一生忘れられない、いい想い出ができました。
**************** 記録 ******************
俵島の北コース往復時間:45分
100kmまで14時間8分
千畳敷到達時間12時27分(6時スタートの場合)
立石観音から千畳敷までの時間:1時間25分
青海島往復の時間:3時間15分
宗頭から虎ヶ崎までの時間:6時間20分
虎ヶ崎からゴールまでの時間:10時間